糸球体疾患

<急速進行性糸球体腎炎>

http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/sannaika/jinqa14b.html

数週~数か月で腎不全に至る、予後の悪い腎炎。何らかの原因で糸球体係蹄が破壊され血漿成分が漏れ出し、その中のフィブリンのchemotacticな作用でマクロファージがBowman嚢に遊走、上皮の増殖を引き起こすと考えられている(半月体形成)。

  ・ANCA関連

  https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/9/101_2667/_pdf

  糸球体にIgや補体の沈着は無い。好中球が直接細血管に付着し障害する。

  ステロイドパルス、免疫抑制などで治療。

 ・MRSA感染後

  https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/5/100_1324/_pdf

  MRSAが産生する外毒素が種々のT細胞の活性化。

  MRSA感染後数週~2ヶ月で、IgG、IgAによる免疫複合体が糸球体に沈着。  
  腎生検では管内増殖性糸球体腎炎と尿細管間質障害を認める。
  治療はMRSAに対する抗菌治療、感染状態での免疫抑制療法は禁忌。

 

 

<急性糸球体腎炎 (溶血菌感染後糸球体腎炎、管内増殖性糸球体腎炎)>

http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/sannaika/jinqa14a.html

https://tmu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=11510&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1
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小児に多い。平均10日の潜伏を経て発症。小児例の大半は、尿所見、腎機能ともに比較的短期間で完全に正常化する。

補体低下、ASO(溶連菌抗体)高値が特徴的。

管内に沈着した抗原がプラスミンを活性化し、炎症を惹起すると同時に、広範に細胞外基質を分解することで糸球体基底膜やメサンギウムを障害し、それらの透過性を亢進させる。ついで潜伏期をもって形成される抗体が循環血中もしくは局所で免疫複合体を形成し、障害され透過性の亢進した糸球体基底膜を通過して上皮下に沈着し hump となる。(Ⅲ型アレルギーを起こす)

対症療法で2週間ほどで回復。

 

<巣状分節性糸球体腎炎>

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/5/102_1114/_pdf

腎組織上,一部の糸球体(巣状)の一部分(分節性)に認められる硬化病変。糸球体上皮細胞の形質異常、T細胞異常、LDL-Cなどが発症に関わる。広範な足突起消失、硬化部にIgMやC3の非特異的沈着を認める。

難治性ネフローゼ症候群の経過をとりながら最終的に末期腎不全にも至りうる 。

しばしばステロイド治療に抵抗性の経過。

 

<微小変化型ネフローゼ

https://www.city.fukuoka.med.or.jp/kensa/ensinbunri/enshin_80_x.pdf

小児のネフローゼ症候群の約80%、成人の一次性ネフローゼ症候群の38.7%を占める。

Tリンパ球から糸球体基底膜透過性亢進因子が産生されcharge barrierが破綻することにより、陰性荷電物質であるアルブミンが係蹄壁を透過しやすくなる。

補体、免疫複合体などの沈着は認めず、足突起の融合のみが見られる。癒合した足突起は消失に至りタンパク尿の原因となる。

二次性…悪性リンパ腫

治療…ステロイド反応性が良好で90%以上の症例で寛解に至るが、再発が約30~70%にみられ、頻回再発やステロイド依存性を示す症例も存在する。

 

<膜性腎症>

膜性腎症f:id:themellowyonkey:20200718213410p:plain

https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/sakura/neph/patient/disease/nephrotic.html

https://www.jsn.or.jp/journal/document/52_7/894-898.pdf

https://www.jsn.or.jp/journal/document/53_5/684-691.pdf

中高年者に発症するネフローゼ症候群の原疾患のなかで最も頻度が高い。30%は自然寛解するが、慢性に進行する例やステロイド抵抗性のある例も多く、3分の1は腎不全に至る。大量の蛋白尿が特徴。

基底膜が肥厚し、上皮側のdeposit間にSpikeとして見られ、進行すると二重膜となる。

特発性(80%)… 糸球体上皮細胞に発現する 2つの主要抗原 NEP および PLA2Rこにそれぞれの自己抗体が結合する in situ 型免疫複合体形成説が主体と考えられている。

二次性(20%)…SLE、B型肝炎、悪性腫瘍など

治療…軽症例では利尿薬など対症療法、ネフローゼ症候群を呈する例にはステロイドや免疫抑制療法。ステロイド反応性の低い例が多い。

 

<膜性増殖性糸球体腎炎>

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https://www.jsn.or.jp/journal/document/52_7/899-902.pdf

原因不明の特発性MPGNは8~30歳代の若年層に限られる。血尿を伴うネフローゼ症候群を呈する例が多い。ほとんどすべての糸球体に係蹄壁の肥厚とメサンギウム増殖が同時に見られる一次性糸球体疾患である。

内皮下の deposit と糸球体基底膜と内皮細胞の間へのメサンギウム細胞の増殖侵入を認める。これらの周囲に内皮細胞によって新たに基底膜成分が形成されて、光顕所見において double contour として観察される。

Ⅰ型,Ⅱ型とも MPGN に特徴的な検査所見は,持続性の血清補体価の低下である。C3 値の低下は,alternative pathway の活性化と,C3 合成低下の両方が原因と考えられてい
る。Ⅰ型の一部とⅡ型 MPGN では,C3 convertase(C3bBb)に対する IgG 自己抗体である C3 nephritic factor(C3NeF)が C3 の低下を引き起こしているといわれており,このC3 NeF による C3 の活性化が MPGN の発症とどのようなつながりを持つかは未解明な部分もあるが,C3 の低下による免疫複合体の処理能力の低下や,C3 NeF が糖鎖に富むIgG であり,C3 と免疫複合体を形成して腎に沈着しやすいことが腎炎発症の可能性の一つとして提唱されている。(C3腎症)

MPGN はいまだ有効な治療法がみつかっておらず、腎移植後も高率に再発を認める。

二次性…主にC型肝炎B型肝炎、SLEなども。

  

<IgA腎症 (メサンギウム増殖性糸球体腎炎)>

 メサンギウム増殖性糸球体腎炎

https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/sakura/neph/patient/disease/nephrotic.html

慢性糸球体腎炎の中で最も多い疾患。溶連菌感染を契機に、数日の潜伏を経て血尿などから発見される。数年間の緩慢な経過をとる場合もある。

メサンギウム領域に異常IgAが沈着する疾患で、紫斑病性腎炎と肝疾患由来の腎炎を除外し診断。

※メサンギウム領域が障害されると血尿が出る。

治療は、軽症例にはACEIやARB、重症例にはステロイド/ステロイドパルス、免疫抑制。

 

<紫斑病性腎炎 (IgA血管炎に伴う腎炎)>

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/5/100_1269/_pdf

組織学的・免疫学的にIgA腎症に類似していることから共通の発症機序と考えられる。

 

 <尿細管間質性腎炎>

Na再吸収の低下による多尿を認めるが、腎不全に至るまで症状は軽微。

重金属、SLE、シェーグレン症候群などによる尿細管/間質障害。

 

<糖尿病性腎症 (糖尿病性糸球体硬化症)>

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http://pathology.or.jp/corepictures2010/12/c07/02.html

http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/sannaika/jinqa14h.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/43/1/43_1_70/_pdf/-char/ja

 結節性糸球体病変→糖尿病性腎症かアミロイドーシスを疑う

 Ⅳ型尿細管性アシドーシス(アルドステロン低値or反応性低下)

 メサンギウム領域が崩壊し、係蹄全体の崩壊に至る→凝集し結節化

 細動脈狭窄が原因か、機序不明。

 

《補足》

ネフローゼ症候群による合併症

・抗凝固/線溶系の低下

・低アルブミン血症により

  ・循環血漿量低下(血流うっ滞傾向)

  ・肝合成能亢進により

    コレステロールフィブリノゲン、凝固因子の増加

これらにより静脈血栓、虚血性心疾患などのリスクが上昇する。